さて前回は、「専門家は、難しい人事評価制度を作りがちです」
という理由をお話しました。
今回は、その理由のひとつ目を解説します。
それは、
わかりやすくて簡単だと、「先生」と呼ばれる資格が無いように感じるから
です。
コンサルタントは、一般的にプライドが高い先生が多いです。
「高いお金を払わせて、専門家に頼んできているのだから、専門家らしいのを作るべきだ!」
と、無意識に思い込んでいるコンサルタントが多いのです。
マジメと言えばマジメなのですが、
これでは依頼主であるあなたは困ります。
実際に、人事評価制度を運用するのは御社の社員です。
社員さんは、日々の仕事をこなすのが仕事です。
たとえば“製造業”であれば、“50代で女性のパート社員”も在籍している事でしょう。
そうした、人事と関係ない仕事をしている社員でも理解できる制度にすべきです。
ここでひとつ、まるでウソのような体験談を披露させて下さい。
ある製造業の企業に研修に伺った時です。
私は研修前に社長と打合せをしていました。
すると、本棚には、ものすごく分厚い『人事評価制度』と
書かれたファイルがあるのに気づきました。
「立派な人事評価制度をお作りになられたのですね」
「うん、これを作るのに、684万円もつぎ込んだからね!」
と、社長は誇らしげに笑います。
この時、私は、「どんな仕組みで社員さんを評価するやり方なのですか?」
と、たずねました。
すると、社長の表情は急に曇り、
「うん……。コレ、お金と時間を相当使って作っただけに、
難しくて、ちょっと説明できないなぁ」と言うのです。
それに驚いた私は、
「総務部の方とかであれば、理解されていらっしゃるんですか?」
と、たずねます。
すると、「いや、今、理解している者はいないなぁ」と、
消え入りそうな声で言うのです。
つまり、お金と時間をかけて作っただけで、使いこなせなかったのです。
この会社は、社員数36名の製造業。
“684万円”という大変な金額を投資したにも関わらず、
今では、“本棚の飾り”としての役目しかなかったのです。
私は、「どうして、そんな複雑なものを作るのか!?」と、
心の底から怒りの感情がわきました。
さて次回は、「専門家は、難しい人事評価制度を作りがち」な理由の
2つ目を解説します。